はじめに
こんにちは。あかね台内科循環器クリニック院長の朝比奈です。
暑い夏は熱中症対策が注目されますが、循環器内科の視点からぜひ知っていただきたい病気があります。それが「静脈血栓症」です。
血栓とは血液のかたまりのことで、血管の中に生じると血液の流れを妨げます。
特に夏は脱水によって血液が濃くなりやすく、血栓症のリスクが高まる季節です。
今回はテレビなどで耳にすることもある静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)について解説します。
エコノミークラス症候群とは?
エコノミークラス症候群とは、正式には
「静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症+肺血栓塞栓症)」
と呼ばれる病気です。飛行機の長距離移動で話題になることが多いため、この名称が広く知られています。長時間同じ姿勢でいることで足の静脈の血流が滞り、血栓ができやすくなります。局所的な症状としては患側の浮腫・腫脹・疼痛が出現します(深部静脈血栓症)。生じた血栓が肺に行く太い血管(肺動脈)に飛散してしまうと突然の呼吸困難、胸痛、失神などの症状が出現し、最悪の場合は死に至るケースがあります(肺血栓塞栓症)。血栓ができやすい条件は飛行機だけではありません。
● デスクワーク中心の仕事
● 自宅での長時間の座位
● 車での長距離移動
● 安静臥床が長い方(長期療養や入院なども含む)
● 猛暑による活動量低下
● 活動性の”がん”をお持ちの方
などの組み合わせでも起こることがあります。
深部静脈血栓症でみられる症状
深部静脈血栓症では、足の静脈に血栓ができるため、次のような症状がみられます。
● 片足だけがむくむ
● ふくらはぎの痛み
● 足が張る感じ
● 歩くと痛い
● 足の熱感
● 足が赤くなる
重要なのは、「左右どちらか片方だけに症状が出ることが多い」
という点です。むくみを年齢や疲労のせいと考えてしまう方もいますが、急に片側の足に症状が現れた場合は注意が必要です。
肺血栓塞栓症は命に関わることがあります
足にできた血栓が血流に乗って肺まで流れると、
「肺塞栓症(はいそくせんしょう)」を起こします。
肺の血管が詰まる病気で、重症化すると命に関わることがあります。
代表的な症状は
● 急な息切れ
● 胸の痛み
● 動悸
● めまい
● 冷や汗
● 失神
などです。
「階段を上っただけなのに急に苦しくなった」
「いつもなら平気な距離で息が切れる」
という症状がみられることもあります。夏の暑さによる体調不良と思い込み、受診が遅れてしまうケースもあります。また、頻度は稀ですが、肺動脈に飛散した血栓が消失せずに慢性的に残存することで、「慢性血栓塞栓性肺高血圧症/CTEPH」と呼ばれる難治性の疾患に移行する場合があります。
夏に血栓症が増える理由
夏は血栓症のリスクが高くなる条件がそろっています。
脱水
汗をかくことで体内の水分が不足し、血液が濃くなります。
活動量の低下
猛暑の日は外出を控えるため、足の筋肉を使う機会が減少します。
長時間の室内生活
冷房の効いた部屋で同じ姿勢が続くことで血流が滞りやすくなります。
このような方は特に注意が必要です
● 高齢の方
● 肥満の方
● 喫煙される方
● がん治療中の方
● 手術後の方
● 高血圧や糖尿病がある方
● 過去に血栓症になったことがある方
● 飛行機や新幹線での長距離移動予定がある方
これらに該当する方は、夏場の水分管理や運動習慣が特に重要になります。
血栓症を予防するために
こまめな水分補給
のどが渇く前から水分を補給しましょう。
足を動かす習慣
座りっぱなしを避け、1時間に1回程度は立ち上がるようにしましょう。
ウォーキング
ふくらはぎの筋肉を動かすことで血流改善が期待できます。
生活習慣病の管理
高血圧・糖尿病・脂質異常症の治療継続も血管を守るために大切です。
気になる症状があればご相談ください
足のむくみや痛みが
「年齢のせいかな」
「夏バテかな」
と思われているケースも少なくありません。
しかし、
● 片足だけが腫れる
● 急にむくみが出た
● 原因不明の息切れがある
● 胸の違和感が続く
といった場合には、深部静脈血栓症や肺塞栓症が隠れている可能性があります。
特に急激な息切れや胸痛を伴う場合は、早めの受診が重要です。
よくある質問(FAQ)
Q. 足のむくみが両側にあります。血栓症でしょうか?
両足のむくみは心不全や肝臓、腎疾患、甲状腺疾患など別の原因も考えられます。症状が続く場合はご相談ください。
Q. 息切れだけでも受診した方がよいですか?
急な息切れや以前と比べて悪化した息切れは、肺塞栓症や心臓の病気が隠れている可能性があります。一度ご相談ください。
Q. 治療方法は?
新たに血栓が出来にくくする薬(抗凝固薬)を使用し、血栓が溶けるのを待ちます。緊急性の高い場合は入院の上、血栓を直接溶かす薬を用いることもあります。
受診の御案内
当院では高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病管理に加え、動悸・息切れ・胸の違和感など循環器症状の診療を行っています。
足のむくみや原因不明の息切れが続く場合は、お気軽にご相談ください。

